防災の日にちなんで考えるBCP(事業継続計画)
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先日、9月1日は「防災の日」で、8月30日から9月5日は「防災週間」でした。今年の2023年9月1日は、ちょうど関東大震災から100年という節目になります。
関東大震災は、1923年9月1日に発生した震源地を相模湾北西部としマグニチュード7.9と推定される大正関東地震によって引き起こされた災害です。相模湾沿岸地域や房総半島南端では、現在の震度スケールで7相当とも言われ、昼に発生したことにより大規模な火災もおこり被害が拡大し、この災害の約10万5000人の死者と行方不明者のうち、約9割が焼死であったと言われています。また、関東南部の山地、丘陵地、台地では前日にかなりの雨が降った影響で地すべりや土石流も発生し、さらに三浦半島から伊豆半島東岸にはわずか5分で数メートルの高さの津波が押し寄せ、熱海では12メートル、房総半島の相浜では9.3メートルに達しました。
日本史上非常に重大な災害であることには間違いありませんが、今年が関東大震災から100年であることを知っている人は意外にも少ないようです。この5月に行われた企業向けのアンケートによれば、「今年2023年は関東大震災から100年である」と知っている企業は半数以下の42.5%に過ぎず、さらに、それを知っているうえで「災害の備えに取り組んでいる」企業はわずか16.5%でした。興味深いことに、従業員数が少ない企業ほど、「100年であることを知っており、かつ備えをしている」という割合が低い傾向がみられました。
最近、日本では大規模な災害が増加しており、直下型地震や南海トラフ地震の発生確率も高まっています。これに対処するために、企業における対策として注目されているのが「事業継続計画(BCP)」です。BCPは、あらかじめ策定しておくことで、災害時の事業継続だけでなく、企業価値向上にも貢献するとされています。
東日本大震災の際、BCPを既に備えていた企業は、迅速な対応によって、生産基盤の壊滅的な被害にあったにもかかわらず、事業を早期に再開できたケースが多くありました。さらに、これらの企業はBCPの見直しを行い、次の災害に備えています。
しかし、中小企業ではBCPの策定が進んでいるところはわずか2割程度というデータがあります。中小企業においては、限られた資金と人員の中でどのようにBCPを考えるべきでしょうか?
まず、BCPのメリットを考えてみましょう。主要なポイントは以下の2つです。
一つ目は、「BCPを策定すること自体が訓練となる」ということです。事前に考えることは、緊急時の適切な行動を可能にします。
二つ目は、「リスクを知ることはチャンスを生む」ということです。例えば、工場を運営する企業がBCPに基づいて被災当日から取引先のメーカーに復旧状況を定期的に報告することは、シンプルながら非常に重要です。このような行動が信頼を高め、受注増につながる可能性さえあるのです。
BCPを策定する際に留意すべきなのは、BCPと防災計画は関連していますが、異なる視点を持っているという点です。耐震補強、避難訓練、火災時の消火などは防災計画に入るべきものではありますが、BCPの内容ではありません。BCPの視点は、「顧客との取引をどのように継続するか」であり、これは防災計画には含まれていない要素です。
さらに、最近では火災や地震だけでなく、豪雨や感染症など、多くの異なるリスクが企業を脅かしています。これら多様なリスクを考慮してBCPを策定しようとすると、具体的な被害のイメージは容易にできますが、BCPが非常に複雑になり、予測できない状況に適応しにくくなるという弱点が生じます。実際、既にBCPを策定していた企業の約3分の2が、東日本大震災時にBCPについて「問題があった」「機能しなかった」と認識しています。これはBCPが「リスク事象型シナリオ」と呼ばれる特定のリスクを想定した設計であったためだと考えられます。
特に中小企業にお勧めされるのは、災害の種類や程度にこだわらず、「自社の中核設備や業務をどのように守るか」「中核設備や業務が停止した場合にどのように対処するか」という観点から考える「機能停止シナリオ」に基づくBCPの構築です。このアプローチに従えば、事前計画がスムーズに実行できるようになります。
しばしば、100点の完璧な計画を立てようとして数年を費やしてしまうことがありますが、BCP(事業継続計画)の策定においては、「できる範囲から始める」というアプローチが非常に重要です。着手するなら3ヶ月後に完成させるというくらいの目標で、最近頻繁に発生しているゲリラ豪雨に備える場合を考えてみるとよいでしょう。
たとえば、豪雨による浸水への備えとして、上階にスペースを確保し、緊急時に中核事業に必要なパソコンや商品をそこに移動できるようにするというようなことで良いのです。まずは、自社の中核事業が何かを詳細に分析し、できることから始め、さらに見えてくる不足している部分を補完し、段階的により効果的なBCPを構築していきます。
「難しいかもしれない…」とためらわずに、まずは実行してみることをお勧めします。BCPに関する行政機関からのサポートサービスも利用できます。このBCPの考え方は企業に限らず、個人事業者や家庭にも通じるもののように思います。
現代は災害が多発する時代であり、会社としてだけでなく、個人としても未知の状況に備えることが非常に重要です。生死を分けるかもしれない備えの必要性にいま私たちは迫られているのです。